KOBE MEISTER

紳士服 / 足立 直樹

昭和23年生 神戸市中央区在住

勤務先:テーラーリングあだち

世界のスーツ発祥地・英国ロンドンで鍛えた紳士服仕立ての技術と心で、顧客には着る喜びを、後進には作る喜びを。

「背広」の語源とも言われるロンドンはサヴィル・ロー・ストリート仕込みの技術に彼独自のセンスを加えて、着る人の体型を補正、品格を高めると共に身も心も若返る洋服を世に送り出している

身頃やアームホールにも繊細な工夫を施す足立さんの写真  後ろ姿の美しい洋服づくりをモットーとしている。「後ろ姿には人生がにじみ出ます。オーダー頂く方の品格を感じさせる裁断と縫製を工夫しています。身近な人達には改めて見直され、世間の人達には憧れのまなざしで見てもらえるような洋服づくりが私の使命です」と言い切った足立さんはその言葉の裏付けとして、Yシャツの上に自分のために作った上着をはおって見せてくれた。サイドベンツにダブルの上着。ズボンとのスーツで、見違えるほど立派な足立さんがそこにいた。
 超一流の技術とセンスはスーツの発祥地、英国ロンドン仕込み。足立さんは25歳の頃、日本語の「背広」の語源とも言われるサヴィル・ロー・ストリートにあるホース&カーチス社で修行した。世界中からオーダーを受けて仕事するプロ技術者のなかでも、とりわけ「アダチ」と指名がよくかかったのは日本人の手先の器用さにプラスしてメンタルセンスを売りものとする足立流洋服仕立てが評判になったから。「高度な技術は必須条件ですが、さらに身も心も満足してもらえる洋服づくりを自分の課題として昼夜をいとわず修行に励みました」と往時を振り返る。
 足立さんは丹波青垣町の生まれ。森林の故郷をあとに洋服の仕事を目指して神戸に出た。年季奉公を積んで技術を修得、数々のコンクールで輝かしい成績を重ねた後、世界の本場で腕を磨きたくなり英国に渡った。2年間の経験を積んで帰国後、我が国における近代洋服発祥地と言われる神戸で独立開業した。
足立さんの作品「自分自身の作品を着こなす足立さん。英国人モデル用に作ったタキシード」の写真 英国仕込みのお洒落なセンスを活かす確かな技術の一つを紹介すると、「八差し(はざし)」という工程がある。スーツの襟の丸みをより立体的に見せるため、生地と芯地を八の字形に縫い合わせていく手法で、ミシンを使わず千針以上手縫いを繰り返さなければいけない大変な作業。「人の目にふれないところにどれだけの創意工夫をするかで勝敗が決まります。長時間着ていても疲れない服にするため、アームホールにミリ単位で余裕を持たせるなどの裏技を使ったりもしています」。 想像以上に重たいアイロンを駆使してクセ付け作業をするなど洋服づくりは重労働だが、仮縫いを二度行うなど辛い仕事も手を抜かない。「オーダーメイドなので失敗は許されません。仕上がり品を見られた時のお客様の笑顔が何よりの喜びです」。 顧客と交流を深めることによってその人の人生がよく理解出来、仕上がりに風格が増すという。男性にとってスーツは戦闘服と心得てここ一番という人生の勝負に勝利出来るよう願いを込めて仕事を進める。「世界の洋服イベント」が海外で開催される際には日本の代表として講師を務めるほか、英国人モデル着用のタキシードを仕立てるなど、世界を見据えて業界に貢献を続ける足立さんは神戸ものづくり職人大学をはじめ後進の指導にも熱心で、洋服づくりの喜びを訴え続けている。

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